TF2 で生産される水素やメタノールは、組成に変動があり、さらに一定量の不純物を含むことが想定されます。よって本研究では、このような市販品よりも品質の低い燃料を用いる場合であっても、燃料中の水素を高純度化できる前処理装置を備えた燃料電池システムの開発を最終目標としています。
前処理装置を接続する対象は市販の1kW級燃料電池システムですが、実際にオフガスを導入する前に、オフガス中の不純物成分がアノード触媒やその他の部材に与える影響を、濃度ごとに評価する必要があります。本年度は、不純物として想定されるアンモニア(NH3)および一酸化炭素(CO)が、白金担持カーボン(Pt/C)ならびに燃料電池システムの発電性能に与える影響を確認しました。
Pt/C をNH3またはCOに接触させた後、電気化学セルを用いて評価を行いました。その結果、COとの接触後には、Pt/Cの電気化学的表面積および触媒性能が著しく低下していることが分かりました。
以上より、COはPt/Cの性能低下を引き起こす一方で、NH3は触媒に直接作用しないといえます。
また、燃料中に不純物1%を導入して出力変動を確認する試験を行いました。NH3、CO共に燃料電池システムの発電性能の低下をもたらし、さらにこれらの成分を同時に供給することで、その性能低下が加速することが分かりました。
これまでの結果から、NH3およびCOはいずれも発電性能の低下をもたらすことが分かりました。また、インピーダンス測定の結果から、NH3が燃料電池システムに与える影響は、プロトン交換を担う固体高分子膜に起因することが明らかになりました。
NH3およびCOの燃焼ガスへの混入で、発電性能は著しく低下(50ppmでも数時間で性能低下)
同時に混入すると、性能低下は加速する
実際の燃料電池セルには、固体電解質膜やアイオノマーが存在する
→触媒のみならず、アイオノマー等への影響も、発電性能に反映される
今年度得られた結果から、NH3およびCOは、影響を及ぼす燃料電池システムの部材は異なるものの、いずれも発電性能を著しく低下させることが分かりました。特にNH3は、低濃度であっても顕著な影響を及ぼすことが明らかとなりました。次年度は、これらの不純物ガスを除去するためのガスラインを構築する予定です。
バイオメタノール中の不純物成分が、メタノール燃料電池の発電特性に及ぼす影響及び許容濃度を明らかにしました。
木質バイオマスを原料として合成された粗バイオメタノールの不純物成分およびその濃度が直接メタノール燃料電池の発電特性に及ぼす影響について調査しました。特に、既往の研究で詳細検討されていなかった蟻酸メチル(MF)とジイソプロピルエーテル(DIPE)を対象とし、2Mメタノールに含まれると想定される濃度を基準に、発電出力が低下しない許容濃度範囲を明らかにすることを目的としました。
通常のメタノール燃料電池では2mol/L (2M)の濃度のメタノール水溶液が燃料として用いられます。既往の報告から、2Mの粗バイオメタノール水溶液に含まれるMF、DIPEの濃度はそれぞれ4200ppm、490ppmとなるため、これらを基準の濃度としました。
MFでは基準濃度を超える5000 ppm においては発電特性に影響は見られませんでしたが、10000ppmでは約10%の出力低下がありました。
この濃度では50mA/cm2以下の低電流密度域から電圧の低下が見られることから、MFあるいはその反応中間体が反応活性点を閉塞していることが示唆されました。
DIPEでは基準を超える620ppmでは発電特性に影響は見られませんでしたが、6200ppmでは400mA/cm2を超えた高電流密度域において電圧の低下が見られました。
低電流密度域では電圧低下が見られなかったことから、この高電流密度域での低下は物質移動抵抗の増大によるものと考えられます。
いずれも基準の濃度においては、発電特性に影響を及ぼさないことがわかりました。