太陽の熱を自分で蓄え、放出する働きを持つ気体のことをいいます。
太陽からの熱は地球の大気を温めて、その熱は赤外線として、また宇宙に向かっていきます。温室効果ガスは、その赤外線を大気中で自分に蓄え、更に放出し、大気の温度を上げる働きを持ちます。
温室効果ガスがない場合、地球の表面温度は氷点下になると考えられています。広く知られているのは二酸化炭素(CO2)ですが、地球の大気に存在する割合は0.04%です。でもそのわずかな存在であるCO2のこの働きのおかげで、地球は生命が暮らしやすい、適度な温度を保っていられていることになります。
今問題になっている「地球温暖化」は、特に産業革命以降に化石燃料を大量に使うことで、人類が排出する温室効果ガスの量が急増したことにより、大気中に熱が蓄えられる量が増えたことが原因と考えられています。つまり「温室効果ガスという存在自体が悪」という訳ではなく、その存在バランスが崩れたことが問題である訳です。そのバランスをどう戻していくか、様々な方向での技術開発での解決が求められています。
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ガス化炉 |
物質を一旦、低酸素で不完全燃焼させてガス化する設備のことです。
発生するのは可燃性ガスのため、回収・不純物除去をすることで、エネルギーとして利用することができます。
一般的な「たくさん空気を入れて燃やして、灰にする」という焼却炉より、発生したエネルギーや資源の利用率がはるかに高いという利点があります。
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ガスクロマトグラフィー |
クロマトグラフィーとは「流体の混合物に、どのような物質がどれくらいの量が含まれているか」を調べる方法です。
流体とは言葉通り、「液体・気体」など「流れる」性質があるものを指します。その流体をカラムという「固定相」が入っている筒の中に流すと、流体に含まれる物質は「固定相にくっつきやすい」「くっつきづらく、流れていきやすい」という性格によって分けられ、カラムの出口に順番に出てきます。これがクロマトグラフィーの原理です。
図で説明すると

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流体Aを、クロマトグラフのカラムに流し込みます。 流体Aに含まれる物質の中には、カラムの中の固定相に「つきやすいもの」「つきづらいもの」があります。カラムの中を、「つきやすいもの」は遅く、「つきづらいもの」は速く進みます。 |


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速く流れた物質順(緑→青→オレンジ)にカラム出口にたどり着き、検出器によって物質の種類と量を計測します。
検出器から出された電気信号を基に出力されるグラフ(クロマトグラム)では、物質の種類と含有量が読み取れます。
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クロマトグラフィーには大きく分けて、液体を測定する「液体クロマトグラフィー」と、気化する液体と気体を測定する「ガスクロマトグラフィー」があります。測定する流体の特性や、分析対象となる含有化合物によっての使い分けがされています。
また、検出器は検出する物質に合わせたものを選びますが、ガスクロマトグラフィーで一番使われているのは「水素炎イオン化検出器(FID)」です。多くの有機化合物を測定することができるため、燃料燃焼実験での排気ガス測定などで使われています。 |
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化石燃料 |
化石を元に作られている燃料のこと。長い年月をかけて、動植物の死骸が地中で変化してできたと考えられています。石炭・石油・天然ガスなどがあり、燃料や化学製品の原料として、特に近代での人類の活動の中で欠かせない物質です。
成分としては、様々な炭化水素が主ですが、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)も含んでいます。燃やすと二酸化炭素 (CO2) の他、窒素酸化物 (NOx) 、硫黄酸化物 (SO2)も発生しますが、CO2や、NOxの一種であるN2Oが温室効果ガスであるだけでなく、NOxやSO2は大気汚染・酸性雨などの環境破壊、呼吸器疾患などの健康被害を引き起こす要因となる物質です。
また化石燃料は有限であると考えられており、燃焼して発生したCO2が自然に化石燃料へ再生されることもないため、将来へ向けた持続可能性の点からも、これからの使用量や利用方法について、早急な検討が必要となります。 |
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カーボンアロイ触媒 |
カーボン(炭素:C)を原料とした触媒です。
現在、燃料電池の触媒として用いられることが多いのはプラチナ(Pt)です。
Ptは化学の世界では「安定して優れた触媒」として用いられることが多い物質ですが、「存在量が非常に少なく高価」というレアメタルです。
カーボンアロイ触媒は、性能を落とすことなく安価にPtの置き換えとして利用することができるので、燃料電池普及とPt資源保護、合わせての効果に期待されています。
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カーボンニュートラル |
GXの説明に出てくる「カーボンニュートラル」とは、「二酸化炭素が【排出される量】と【吸収する量】を同じにする取り組み」のことを指します。
「植物は昼間、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を吸収して、光のエネルギーを使ってでんぷん(養分)と酸素(O2)を作る」ということは、小学生の理科の授業で教わるので、皆さまご存じと思います。その働きが「光合成」ということは、中学生で習います。
化学反応式で書くと、以下の通りになります。
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2 (※)
このC6H12O6は「グルコース」という物質で、これがどのような形で集まっているかで、イモなどでおなじみの「でんぷん」になったり、植物の体をつくる材料となる「セルロース」になったりします。
植物の体にある「でんぷん」や「セルロース」を作っている「グルコース」は、上で書いた通り、炭素(C)・酸素(O)・水素(H)からできています。そのCは、「光合成」で吸収したCO2の「C」からもらっています。
逆に植物を燃やすと、グルコース中の「C」が空気中の酸素と結びついて「CO2」になり、空気に混ざります。
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O
そして、その空気中のCO2を、また植物が光合成で吸収します(※)。
このように、植物を燃料にすることは、植物と空気の間でCO2がお互いやり取りされる関係なので、「二酸化炭素が排出される量と吸収する量が同じ」、つまり「カーボンニュートラル」となります。
しかし、これが石油や石炭などの「化石燃料」の場合は、どうでしょうか。
化石燃料も、主に炭素(C)と水素(H)、酸素(O)からできていますので、燃やすと空気中の酸素と結びついて「CO2」ができ、空気に混ざります。
例えば、ガソリンはいろいろな物質(主に炭素数4 - 10の炭化水素)が混ざっているのですが、例として炭素数5(n=5)のC5H12(ペンタン)で燃焼を考えると、
C5H12 + 8O2 → 5CO2 + 6H2O
となり、CO2が発生することがわかります。
では植物と同じく、排出されたCO2は自然と化石燃料に戻るでしょうか?いいえ、これは自然には戻りません。また、化石燃料から排出されたCO2を、植物は大きく余分に吸収してくれません。
なので、対策をせず化石燃料を使い続けると、空気中のCO2も増え続けるということになります。そして、現在地球上で使われている多くは化石燃料です。「化石燃料の利用を減らす」ということも、カーボンニュートラル実現には大きな課題となります。
化石燃料由来のCO2削減については現在、「Bio-fuel・E-fuelの利用や、アルコールのドロップインで、化石燃料を使う割合を減らす」「化石燃料利用で発生したCO2を外に逃がさず、地中に戻す」「CO2を更に、メタン(CH4)などの燃料に変換させる(メタネーション)」などの技術開発が行われています。
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カーボンブラック |
炭素(カーボン)が主な成分となる微粒子。真っ黒でとても軽いのが特徴で、タイヤなどのゴム製品に補強材として添加されています。また新聞のインク、プリンターのトナーなどの「黒」はカーボンブラックによる着色です。書道で使う墨の原料になるススも、品質管理されて作られているものなのでカーボンブラックに加えられます。
電気を流す力にも優れていて、電子機器部品や、意外なところだと自動車の燃料キャップの「静電気防止剤」としても使われています。
カーボンブラックの中でも、アセチレンガスを用いて作られたものは特に「アセチレンブラック」と呼ばれます。更に純度が高く電気を通す能力が高いことを生かし、リチウムイオン電池などに使われています。
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グラフェン |
六角形を作った炭素原子が、隙間なくハチの巣のようにつながっている、厚みが炭素原子1個分の板状の材料。この板が数多く重なっているのが、鉛筆の芯である「黒鉛(グラファイト)」です。
熱や電気を伝える力や速さに優れており、薄さから透明性と柔軟性も得られるということで、特に電気製品への活用が期待されています。
このハチの巣のような構造は「ハニカム構造」と言われ、「一定材料量を利用して、一番強度が出せる構造」であり、グラフェンの「薄く軽量だが、強度は極めて高い」という性質につながっています。
なお、グラフェンは「板状」ですが、この炭素のハニカム構造が円筒形になったのが「カーボンナノチューブ」となります。
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好熱菌・メタン菌 |
好熱菌とは、名前が表している通り「熱がある状態」である、55℃以上で生育できる微生物です。
またメタン菌は「酸素が嫌いで、有機物からメタン(CH4)を作る」という特性を持っています。
両方とも「古細菌(アーキア)」という、一般で言われる細菌(バクテリア)とは違う生物の種類に多く所属しています。
古細菌には他にも「高度好塩菌(塩湖など、塩化ナトリウム(NaCl)が多いところにも存在)」など、人間から見たら過酷な環境に住める種類が数多くいます。
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コンポスト |
英語でコンポスト (compost)とは「堆肥」の意味で、「バイオマスを管理した状態で微生物に分解させてできた、環境に悪影響を及ぼさない肥料」のことを言います。日本では、「微生物の分解能力や、その発酵過程で発生する熱を利用して、バイオマス系廃棄物を『堆肥』に変える容器自体」を「コンポスト」と言うことが多いです。
「燃焼することなく、生物由来の物質を肥料として自然に返す」ということで、環境問題やリサイクルの意識が高まるとともに名前が広まりました。専用容器が普及してきていますが、空気・湿度・温度などの環境調整や、入れるバイオマス系廃棄物の水分量や種類の注意は必要です。昔からある「落ち葉をビニール袋に入れて密閉させ、腐葉土を作る」ということも、立派なコンポストです。
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再生可能エネルギー |
「GX」「地球温暖化防止」「カーボンニュートラル」「資源保護」などの検討は、いまや「再生可能エネルギー」を抜きにはできません。「半永久的なだけでなく、環境への負荷が少ない」、特に「二酸化炭素(CO2)の排出が少ないクリーンなエネルギー」としての役割が大きいからです。
この定義については、2009年に成立(2023年名称改正)した「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)」で、エネルギー源を「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」としています(「なっとく!再生可能エネルギー」 |資源エネルギー庁) 。
具体的なエネルギー源としては、政令では「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「太陽熱」「大気中の熱その他の自然界に存する熱」「バイオマス」が定められています。「大気中の熱その他の自然界に存する熱」を利用しているものにはヒートポンプが挙げられます。また潮力などの「海洋エネルギー」や、豪雪地帯での「貯蔵雪氷による冷熱」も、研究段階ですが有望視されています。
但し課題もまだ多くあります。例えば再生可能エネルギーを利用しての発電だと、
- どうしても発電場所や規模の関係で、オフグリッド型になりやすい
- 自然の力を利用しているということで、季節や天候などの影響で供給量が安定しない
などが挙げられます。その解決には、「電気を作る」と、その先の「作った電気を安定して溜めて運ぶ」の「両輪を揃えること」が不可欠となります。
本プロジェクトは群馬県が進める「ぐんま5つのゼロ宣言」実現のため、群馬県企業局による「再生可能エネルギー・脱炭素化研究開発等助成金事業」として進められています。「5つのゼロ宣言」の基となる「2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例」には「再生可能エネルギーの導入促進」についても明記されています( 「2050年に向けた「ぐんま5つのゼロ宣言」実現条例を制定しました」 |群馬県 知事戦略部 グリーンイノベーション推進課)。
県内の再生可能エネルギーを活かし、それをまた県内でどのように有効利用していくか。群馬大学では、両輪を考えての仕組みづくりと技術開発を進めてまいります。
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酸化・還元 |
中学生の時に習う「酸化・還元反応」ですが、おそらく簡単には「物質に酸素(O)が結びつくと酸化、離れると還元」という内容だったのではないでしょうか。
実験では、「マグネシウム(Mg)リボンを燃焼させる」というものが、かなり激しく光を出して燃えるので印象深かったのではないでしょうか。化学式は、燃焼とは「物質とOが化学的に結びつく」ということですので、以下になります。
2Mg + O2 → 2MgO
また銅(Cu)も、加熱すると酸素と結びついて酸化銅(CuO)という黒ずんだ金属になりますが(酸化)、そのCuOに炭素(C)を入れて再度加熱すると酸素が離れ、元の光沢金属色のCuに戻ります(還元)。この場合、炭素からの視点なら「炭素が酸化されて二酸化炭素(CO2)になった」とも言えます。
銅の酸化:2Cu + O2 → 2CuO 酸化銅の還元(炭素の酸化):2CuO + C→ 2Cu + CO2
ここまでが「中学学習内容」ですが、高校以降の化学では、酸化還元は「水素(H)のやり取り」としても説明されます。この場合、酸化は「Hを失うこと」、還元は「Hを結びつけること」となり、Oとは「失う」「結びつく」が逆になります。更に、酸化は「物質が電子を失う変化」、逆に還元は「物質が電子を受け取る変化」ともいえます。
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酸化チタン(TiO2) |
チタン(Ti)と酸素(O)からなる、とても安定した明るい白色の化合物です。塗料や日焼け止めに使われています。
「光触媒」という、光(紫外線)を受けることで活性化する特性を持っています。酸化力が非常に強いため、特に有害炭化水素や一酸化炭素(CO)を酸化して無毒化する触媒に使われます。
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次世代モビリティ |
「次世代の移動手段」のことを言います。
「モビリティ(Mobility)」には「移動のしやすさ」という意味がありますので、詳細に言うと「現在よりも更に優れている、新しい技術の移動方法」ということになります。例えば自動運転やドローン、「パーソナルモビリティ」と呼ばれる1~2人乗りの超小型電気自動車などがそれにあたり、日々開発・実用化がされています。
群馬大学でも「次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS) 」にて、主に「自動運転」「スローモビリティ」について研究開発が行われています。
なお「スローモビリティ」とは、「時速20km未満で公道を走ることができる電動車、およびそれを使ったサービス」のことを指します。経済成長の中で、今まで求められてきたのは「速く、多数を運ぶ移動手段」でした。しかし地域コミュニティ内での移動では、それを極めることが一番ではなく、住人や環境に合わせた「ゆっくりと、少人数で」という移動手段も必要と見直されてきています。既存手段より省エネルギーであるスローモビリティは、更に太陽光や水力発電などによるグリーンエネルギーを利用することで、温暖化防止にも大きく貢献できます。
群馬大学理工学部がある桐生市では実際に、開発に参加した「MAYU 」が市街地で活躍しています。
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触媒・触媒被毒 |
自分の形を変えず、周りの化学反応を進めるのを助ける役割をする物質を「触媒」といいます。
「二酸化マンガン(MnO2)にオキシドール(うすい過酸化水素水:H2O2)を加えると、酸素(O2)が発生する」という理科の実験は、記憶にあると思います。
この場合の化学反応式は
2H2O2 → 2H2O + O2
となります。
「あれ? MnO2は化学反応に関係していないの?」となりますよね。
実はH2O2は不安定な物質で、「Oを離して、安定しているH2O(水)という形になりたい!」と、ゆっくりながら自分で自身を分解しようとしているのです。理科の実験の時は、Oを離す速さを手伝う物質として「MnO2」を入れています。このMnO2の役割が「触媒」となります。
体の中で働く触媒は「酵素」と呼ばれ、食品の発酵や医薬品の分野でも活用しています。
なお触媒は、他の化学反応を助けるのには自分の姿を変えませんが、「触媒毒」といわれる物質と出会ってしまうことで反応し、働けなくなるということがあります。これを「触媒被毒」といいます。
燃料電池の場合、触媒毒は燃料として送られる水素(H2)と一緒に含まれている不純物が考えられます。触媒毒の種類を見極め、被毒に耐える触媒の研究が行われています。
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水素(H2) |
水素原子(H)が二つ組み合わさってできている水素(H2)は、空気よりとても軽く、また非常に燃焼・爆発しやすいという性質があります。また下の化学反応式通り、燃やしても二酸化炭素(CO2)を発生させませんので、温暖化防止策を考えるには重要な物質です。
2H2 + O2 → 2H2O
2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」では、史上初で聖火台の燃料としてH2が採用され、また車両や施設で燃料電池が多く活躍しました。しかも、ここで使われたH2は水(H2O)を再生可能エネルギーで電気分解した、製造時にもCO2を出さない「グリーン水素」とのことで、環境や持続可能性を考慮した「新しい五輪」を印象付けたものとなりました。
但し、H2を実際に生活の中に取り込むには、「安全性」「専用設備の新規設置」などが課題です。「爆発しやすく、しかもその威力が大きいH2を、どのように運び保存するか」「今までに使っていた機械や設備を、どのようにH2を利用できる形に変えていくか」を検討する必要があります。
なお、以前は浮かぶ風船の中に水素ガスを使っていましたが、危険ということで日本では禁止され、現在では安全なヘリウムガス(He)が使われています。
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水利権 |
河川・湖・地下水などの公共の水を、農業・工業・発電・家庭などで使うための権利です。「河川法」に基づいて決められていて、権利を取るには国や自治体の許可が必要です。
水は生き物の生命活動に必須なものですが、農業が始まったことにより、更にその権利を社会ではっきりとさせようという動きがみられるようになりました。例えば、川の上流で水をたくさん使ってしまえば、下流の水量は減り、田畑への水不足が起きます。特に降水量が少ないとそれが顕著になり、下流のみ飢きんが起きるという恐れがあることから、古代より「上流下流で平等に水を得られるように」という取り決めがされていたと思われます。世界的にもこのような「水の権利」は、何時でもどこでも作られていることが知られています。
河川法の対象になるのは「一級河川(国が管理)」「二級河川(都道府県が管理)」「準用河川(市町村などが管理)」となります。対象とならない「普通河川」には山の沢など、自然な小規模水流(ただし河川法で指定されていない)があります。
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ストルバイト |
リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)の水和物(MgNH4PO4·6H2O)で、石のような塊です。
下水の処理を行うときに、下水がアルカリ性だと含まれていたリン酸(PO4)やアンモニア(NH3)、マグネシウム(Mg)が沈殿して結晶化してしまいます。それがストルバイトで、配管などを詰まらせる原因になります。
しかし、ストルバイトに含まれるリン(P)や窒素(N)、Mgは、肥料として有効活用できる物質でもあるため、再利用するための研究が近年進められています。
なお、「ストルバイト」の名前を一番聞くのは、医療分野かもしれません。発症すると非常に痛い「尿路結石」の石が、ストルバイトの場合があるためです。
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循環流動層炉(CFB) |
循環流動層炉(CFB:Circulating Fluidized Bed)とは「空気を吹き上げて、触媒などの粒子をふわふわ浮かして、液体のように装置内を回し続けている炉」のことで、そこに燃料を一緒に入れて燃やすと、細かく、そしてまんべんなく燃やすことができます。比較的低温での燃焼になるのでNOxが出づらいという利点があります。
バイオマスは水分を多く含んでいますが、CFBなら効率よく燃焼できます。更にガス化炉の技術も合わせることでメタン(CH4)、或いはメタネーション用の原料となる一酸化炭素(CO)や水素(H2)などの合成ガスを生成することができ、二酸化炭素(CO2)の発生を減らすことができます。
バイオマスをガス化CFBで燃焼させて生成されるものには、他に「タール」「チャー」があります。タールは処理が難しい物質ですが、熱や触媒などを利用して分解するなどの技術が研究されています。チャーは炭のような固体で、燃料、土壌改良材、吸着材などに活用できます。
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石油・天然ガス |
石油は化石燃料の一種で、炭化水素の他、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)も含む油。石油は精製することで、「天然ガス」「ガソリン」「灯油・軽油」などに分けられます。
天然ガス |
メタン(CH4)を主成分として、エタン(C2H6)・プロパン(C3H8)など炭素数2~5の炭化水素を多く含む混合気体。冷却して液体にしたものは「液化天然ガス(LNG)」と呼ばれます。燃焼しても二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)の排出が比較的少ないため火力発電や、また日本では都市ガスとして多く使われています。 |
ガソリン |
原油から精製された「ナフサ」から、炭素数4~10のものを精製した炭化水素混合物。常温で揮発性が高く、ガソリン用自動車の燃料として多く使われています。 |
灯油 |
原油から精製された「ケロシン」から、炭素数9~15のものを精製した炭化水素混合物。他の石油由来燃料より取り扱いが比較的容易なので、家庭用暖房器具に多く使われています。 |
ジェット燃料 |
原油から精製された「ケロシン」から精製され、航空用のジェットエンジンに使われます。灯油とほぼ同じ成分であるものの、規格は更に厳しくなっています。 |
軽油 |
原油から精製される、炭素数10~20の炭化水素の混合物。主にディーゼルエンジン用の燃料として使われています。日本では、ガソリンより税金が安いという利点もあります。 |
重油 |
石油より上記の石油製品を精製した後の残渣、或いはそれを精製した炭化水素化合物をいいます。燃料としては船舶のエンジンやボイラーに用いられます。燃料としての重油を精製した残りがアスファルトとなります。 |
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セルロース・ヘミセルロース |
植物の体を作っている物質です。
その存在比は樹木の場合、40~50%が「セルロース」、20~25%が「ヘミセルロース」、20~35%が「リグニン」と言われています。
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セルロース |
構造は基本的にグルコース(C6H12O6)だけでできています。地球上で最も多く存在する炭水化物で、人間が食べる食物繊維の多くはセルロースです。 食物以外でも紙、綿として利用されています。
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ヘミセルロース |
構造にグルコース以外の様々な糖も入っている炭水化物です。セルロースと比べて、まだ資源として利用される機会が少ないバイオマス原料です。 |
リグニンは他の2つとは異なり、フェノール性化合物です。木質素ともいいます。 |
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全固体電池 |
中に液体がなく、固体の物質のみで電子のやり取りができる電池のことです。
「レモンに金属板を刺して電池が作れる」という実験を見たことがありますか? レモンを半分に切って、銅(Cu)と亜鉛(Zn)の板を一枚ずつ刺し、その間に電気コードと電球をつなぐと、電球が光るものです。
この原理ですが、レモンの果汁の中で亜鉛が溶けて亜鉛イオン(Zn2+)と電子(e-)に分かれ、e-が電気コードを伝わって銅の方に移動します。このe-の動きが「電流」となり、電球が光るわけです。
このレモン電池に大事なのは「亜鉛を溶かすレモン果汁」、つまり「電解質の存在」です。今まで発明された多くの電池の仕組みは、まず「電解質が液体である」ことが大事でした。レモン電池も、乾燥したレモンピールで試しても成功しません。
しかし近年、電解質部分も固形にした「全固体電池」が求められ、開発されています。理由としては「電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)のバッテリー安全性・性能向上」が大きく挙げられます。 |
 <全固体電池>放電時 |
現在開発されている全固体電池は、リチウムイオン電池の発展形となります。ここで電解質を液体から固体にできれば、液漏れや内部短絡が起きないので、温度や衝撃への耐性が強くなると考えられます。
また、電気を溜める力も大きくなることがわかっており、一回の充電で走る距離も長くすることができるなど、車としての性能も向上します。
化石燃料から電気にエネルギー利用を変えていく必要が出てきた中で、全固体電池は自動車関係以外でも、大容量でなおかつ安全な電池として求められると思われます。
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層流拡散火炎 |
層流とは「流体が乱れずに、きれいな層で流れている状態」、拡散火炎とは「燃料と空気が別々に入り、炎の中で混ざりながら燃焼が進む状態」のことを指します。
ろうそくの炎のような細長くなめらかで安定した形になり、燃える速さはあまり速くありません。燃焼についての基礎実験の時に使われます。
なお、層流の逆は「乱流」、拡散の逆は「予混合」となります。
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タール |
石炭や木などの有機物を、酸素に触れさせず高温蒸し焼きしたときに得られる、黒くてねばねばした燃える液体です。
古くから「防水」「防虫」の効果があるということで、船や家などを作る素材として使われてきました。また古代エジプトでは、ミイラの防腐処理に使われています。
主に石炭を原料としたコールタールがよく知られており、コークスを作る時の副産物として生成されます。皮膚病の治療薬や道の舗装道路材にも使われましたが、発がん性があることがわかったこともあり、現在は利用も減少しています。
バイオマスを原料としたものは「バイオマスタール」と言われ、その中でも木質を原料としたものが「木タール」です。水蒸気や熱を利用して分解することにより合成ガスや液体燃料へ変換するという技術が開発されており、こちらはカーボンニュートラルに有効と注目されています。
なお「黒くてねばねばしていて、道路の舗装」というと思い浮かぶのは「アスファルト」ですが、こちらは「原油を精製した残り」で、タールとは全く別の物質です。また、たばこのパッケージに「タール」とありますが、これは「たばこに含まれる化学物質」のことで、肺に黒くねばねばとこびり付くことから関連付けられたと思われます。
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炭化水素 |
炭素原子(C)と水素原子(H)による化合物。構造で一番単純なものはCが一つのメタン(CH4)で、炭素数が増えていく毎に結合の形も複雑に変わっていくことが特徴です。例えば、Cがあと1つ増えた「Cが2個の炭化水素」となると、一気に数が増えて3種類になります。Cの数は変わらなくても、Hの数と形はかなり変わることがわかります。
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メタン(CH4) |
エタン(C2H6) |
エチレン(エテン)(C2H4) |
アセチレン(エチン)(C2H2) |
※「エチレン」は果物の成熟を促す植物ホルモンとして、「アセチレン」はガス溶接用のガスとして知られています。
この後、「Cが3個の炭化水素」はCが2個の時と同じ3種類ですが、更にもう一つCが増えた「Cが4個の炭化水素」となると、また数が増えて8種類になります。「Cが16個の炭化水素」にもなると、例えばすべての結合が単結合(-)のみ(二重結合(=)や三重結合(≡)を持たない)である「ヘキサデカン(C16H34)」だけでも10,000個以上の形が違う種類(異性体)が存在します。
また、炭化水素の状態は大まかにいうとCの数で変わり、目安としては常温常圧だと、Cの数が1~4くらいまでは気体、5~17くらいまでは液体、それ以上は固体となります。化石燃料である石油や天然ガスは、いろいろな種類の炭化水素が混ぜ合わさったものですが、このそれぞれの特性を利用して精製することで、様々な性質の燃料を取り出すことができます。
なお有機化学の世界では、一見して構造がわかる命名法が決められています。
例えば、頭のギリシャ数字は「同じ元素が複数ある時の数」を、語尾が「-ane」は単結合のみ、二重結合があれば「-ene」、三重結合があれば「-ine」と変わることで表す、というようにです。
ギリシャ数字は以下の通りですが、炭化水素の命名では炭素数1から4は別に決められた言葉があり、使われるのは5(ペンタ)以降です。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
ギリシャ数字 | mono | di | tri | tetra | penta | hexa | hepta | octa | nona | deca |
炭化水素接頭 | meth | eth | prop | but |
アルカン(-ane) | メタン | エタン | プロパン | ブタン | ペンタン | ヘキサン | ヘプタン | オクタン | ノナン | デカン |
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中鎖脂肪酸 |
「脂肪酸」とは炭素(C)、水素(H)、酸素(O)からできていて、名前の通り体についている「脂肪」に大きくかかわっている物質です。
脂肪酸の種類は長さで分けることができるのですが、一般に食べられている油脂(オリーブオイルやラードなど)は「長鎖脂肪酸」、その半分ほどの長さのものは「中鎖脂肪酸」と呼ばれます。
中鎖脂肪酸にはカプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)などがあり、ココナッツなどのヤシ科植物や牛乳、母乳にも含まれています。この中鎖脂肪酸100%で作られているのがMCTオイル(MCT:Medium Chain Triglyceride)で、近年食卓でもおなじみになっています。
炭素の数が8~12でできている中鎖脂肪酸は水になじみやすく、吸収された後分解されやすいとされ、生活習慣病改善などに効果があると期待されています。
また、これら中鎖脂肪酸とメタノールを反応させて(エステル化)できた化合物である「メチルエステル」は化粧品の成分として知られ、また近年ではBio-DieselであるFAMEとしての活用が注目されています。
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ドロップイン燃料 |
「今まで使っているガソリンや軽油などの燃料に混ぜても、設備や部品を特別に改造することなく使える燃料」のことを言います。
自動車や飛行機、発電所など、世の中には様々な「燃料を燃やしてエネルギーを得る」という「内燃機関」がありますが、使う燃料の種類によって、構造はそれぞれ異なります。例えば自動車は「ガソリン車」は「ガソリン」、「ディーゼル車」は「軽油」を燃料として使いますが、それぞれ燃料の燃える性格を生かした構造となっており、特に点火の方法が異なります。
では、「軽油の方が安いから、ガソリン車に入れちゃえ!」「軽自動車には軽油のはず」と給油してしまったらどうなるでしょうか? この場合まったくエンジンがかからないどころか、エンジン本体が壊れる可能性があります。逆の「ディーゼル車にガソリン」の場合、更に深刻な状態になります。ガソリンスタンドで同じように販売されていても、「ガソリン」「軽油」は「蒸発しやすさ」「燃えやすさ」などが大きく離れた別の液体です。通常はエンジンや設備の燃焼方法に合っていない、設計・開発者の想定と異なる燃料を入れてはいけないのです。
しかし近年、持続可能な社会を考える上で「従来の燃料に混ぜても、内燃機関や設備を交換せずそのまま使える」というドロップイン燃料が注目されています。なるべく元の燃料の性格に近い物質を代わりに、或いは混合して使うというもので、ガソリンへのエタノール混合や、飛行機用燃料への実用化が既にされています。E-fuelの合成ガソリンや、Bio-fuelのBio-Diesel・バイオエタノールなどを用いることで、カーボンニュートラルによる温暖化防止にもつながる取り組みです。
ただし、性格は似ているとはいえ、完全に同じ物質でないことが開発の壁にもなります。その一つの例えで「ガソリンとエタノールの蒸発特性の違い」を挙げてみます。
最近「エタノール(C2H5OH)混合ガソリン」が一般的に使われるようになってきています。C2H5OHはガソリンに分離せずに混ざりやすく、運転を安定させるメリットがあり、またバイオマス由来のものにすれば、カーボンニュートラルに近づくことになります。
C2H5OHは消毒でお馴染みですが、皮膚につけると直ぐに蒸発してヒンヤリします。これはC2H5OHの「周りの熱を奪って蒸発しやすい」という性格によるものです。物理的な値からも、熱の奪いやすさは「エタノール > ガソリン」というデータがあります。
一方ガソリンは、セルフスタンドで車の給油をしたことがある人はわかりますが、給油口の蓋を外すと気体になったガソリンが「シューッ」と音がして抜けるのがわかると思います。蒸発しやすいとはいえ、通常の生活でC2H5OHの瓶を開けただけでは蒸発した気体が音を立てて漏れることはありませんので、感覚的にも常温での蒸発しやすさは「ガソリン > エタノール」ということがわかります。
ガソリン車のエンジンは、そのガソリンの「蒸発のしやすさ」を活かした作りになっています。ここで「蒸発しやすさはガソリンより弱く、また周りの熱はガソリンより奪いやすい」というエタノールを多く入れすぎるとエンジン内を冷やし、更に最初に点火するときの性能が落ちる可能性が高まります。
他に課題もありますが、逆に言うと、このような問題点を解決することがドロップイン燃料の可能性を広げます。安全に効率よく使える物質の選定や混合割合などの研究が、燃料と内燃機関両方で進んでいます。
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内部標準法 |
「分析対象試料の中に標準となる物質を入れて同時に測定し、その両方のデータを比較して、調べたい物質の濃度を計算する」という方法です。
例えばクロマトグラフィーでの分析では、分析対象物質の濃度は「クロマトグラムの頂点高さや面積」より計算されます。この計算をするためには、まず濃度が正確にわかっている「標準」を使ってお手本クロマトグラムをつくり、分析対象物質の測定結果と比較しての計算をする必要があります。
ここで、この標準を分析対象の試料の中に混ぜて一緒に測定するのが「内部標準法」です。併せて測定することで、データの誤差が少なくなる利点があります。但し標準に選ぶ物質は、「分析対象物質に近い性質の上、試料内に含まれていない」など、選ぶのに注意が必要です。
ちなみに「外部標準法」もあり、これは「分析対象と標準を別々に測定し、両方の結果を比較する」という方法で、内部標準法より手間はかかりませんが、誤差が大きくなる可能性があります。
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二酸化炭素(CO2) |
1個の炭素原子(C)と2個の酸素原子(O)による化合物。炭酸飲料のシュワシュワの泡やドライアイスの原料としても、身近に感じることができます。また、理科の授業でもおなじみの物質です。
存在確認(石灰水にストローで息を入れると濁る):Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O(水酸化カルシウムが炭酸カルシウムになって白濁します)
燃焼(アルコールランプを燃やす):2CH3OH + 3O2 → 2CO2 + 4H2O
実験的製法(石灰石に薄い塩酸を入れる):CaCO3 + 2HCl → CO2 + CaCl2 + H2O
光合成:6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
空気中に0.04%含まれており、その温室効果ガスとしての働きで、地球の大気は適温に保たれてきました。
しかし、近代の産業活動で化石燃料の使用が莫大に増え、それにより大気中のCO2濃度が上がったことで地球温暖化が引き起こされたと考えられているので、排出・循環対策が急務になった物質です。物質の温暖化能力を示す「地球温暖化係数(GWP)」という指標がありますが、これはCO2を基準の「1」として表しています。
温暖化対策の中で「カーボンニュートラル」が注目されていますが、これは「CO2が【排出される量】と【吸収する量】を同じにする取り組み」で、「カーボン」は「CO2中のC(Carbon)」を指します。
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ニューベリーアイト |
リン酸マグネシウムの結晶に水が取り込まれている化合物(MgHPO4・3H2O)のこと。
ニューベリーアイトとアンモニアがあり、pHをアルカリ性に寄せることで、ストルバイトを精製することができます。
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燃料電池 |
乾電池などの一般的な電池は「金属素材の負極が電解質で溶けてイオンと電子に分かれる」という仕組みを利用していますが、燃料電池は「「燃料」と「酸化剤」それぞれが、触媒により起こす酸化還元反応」を利用して、電気を作っています。
燃料電池内部の化学反応を、身近で使われることも多い「固体高分子形燃料電池(PEFC)」で説明します。
水の電気分解は中学校の理科で習いますが、言葉通り「水(H2O)に電気のエネルギーを与えて、水素(H2)と酸素(O2)に分解する」というもの。化学反応式は以下の通りです。
2H2O → 2H2 + O2
とても簡単に言ってしまうと、PEFCは「水素(H)(燃料)」と「酸素(O)(酸化剤)」から電気を発生させているのですが、これは「水の電気分解」の逆にあたります。
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燃料電池に入ったH2はアノード触媒で酸化反応が起き、水素イオン(H+)と電子(e-)に分かれます。e-の流れが「燃料電池としての電気の流れ」です。一方H+は電解質を通ってもう一つの触媒であるカソード触媒へ流れ、そこで電気の役割をしてきたe-と、空気中のO2と合わさって還元反応が起きH2Oができます。これが基本の仕組みとなります。
燃料電池内のカソード側で起きるこの反応は「酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)」と言われ、燃料電池の発電効率や触媒性能を調べるための指標となります。 |
アノード触媒に反応させるH2は、事前に都市ガス(メタン(CH4))などから取り出したものを使うことが多いですが、メタノール(CH3OH)を直接触媒に反応させてH2を発生させるという方法もあります。この方法は「直接メタノール形燃料電池(DMFC)」と呼ばれ、長時間発電が可能です。
燃料電池は「エネルギーの高効率利用システム」として実用化が進んでおり、またCO2を発生させず、燃料も「グリーン水素」にすることにより、カーボンニュートラル達成に有効な技術として注目されています。
その中でも固体高分子膜を電解質に使っているPEFCが軽量で高性能ということで、自動車では「燃料電池自動車(FCV)」として、また家庭用には「エネファーム」として一般に普及しています。但し、触媒に高価なプラチナ(Pt)が現在多く使われているため、どうしても高額になります。広く普及させるためには触媒の改良が必要と、研究開発が進められています。
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ノネン |
C9H18の炭化水素。揮発性があって燃えやすく、界面活性剤の原料としても用いられます。
炭化水素の名前を付ける法則より、「二重結合を1つ持つ、炭素が9個ある炭化水素」と読み取ることができます。
また前に付いている数字で、二重結合の位置がわかります。「1-ノネン」なら、「二重結合の位置が1番目(一番端)にある」と読み取れます。
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バイオマス |
生物資源(bio)と量(mass)を合わせた言葉で、「再生可能で、今生きている生物から得られる有機物」「枯渇しない、生物からできた有機物。但し化石燃料を除いたもの」です。
生物、特に植物から得られる有機物(構造に炭素(C)を持っている化合物)は、光合成によって植物の中で作られるものなので、太陽光と水、二酸化炭素(CO2)、そして生きた植物がある限り、繰り返し作られ使える資源(再生可能)と考えられています。
「化石燃料」も「昔の動植物の死骸が、長い時間をかけて変化したもの」と考えられており、すると「生物由来の有機物」となりますが、こちらは燃やして発生したCO2が自然に化石燃料に戻ることはない、つまり「再生可能」ではないので、「バイオマス」ではありません。 |
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パイロットスケール |
化学工学の世界では、パイロットスケールというと「試作段階」という意味があります。パイロット(pilot)が「試験的な」、スケール(scale)が「段階」で、ラボスケール(実験室での段階)と、フルスケール(完成された商業生産段階)の中間にあたります。
例えば「ある物質を実験室のビーカーで作れる方法を見つけたけれども、その方法で直ぐに工場での大量生産レベルで作って売る」ということはできるでしょうか?
長時間、そして大量生産としての設備を稼働させたい場合、一要素としてですが温度や圧力、反応時間などの制御が必要になってきます。そして「実際にそれらを制御できるものなのか」「できるならどういう方法があるのか」「その方法を実現させるための設備設計はどうするか」「設計した仕様で動くのか」「その仕様は安全なのか」「危険な副産物は発生しないか」…などの「技術的な妥当性」を、フルスケールとしての完成品を作る前に検討を続ける必要があります。
更に、企業での工場生産とは「完成した製品の販売」が目的です。どんなに立派な設備ができても「コストが高すぎて、作っても売れない製品」しか作れないのでは、意味がないのです。実用化のためには、材料やエネルギーの使用量を測定した上での「経済的な妥当性」も図らなければなりません。
生産現場での実用に近づけるための検証評価にパイロットスケールは必要不可欠であり、「理学的な化学の現象」を「産業に応用する」という「化学工学」という学問が力を発揮する場です。
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バガス |
サトウキビは砂糖の原料になるショ糖を絞ると、全体の25%が繊維として残りますが、その繊維を「バガス」といいます。その成分は「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」で、現在は主に紙や家畜飼料の原料として使われています。
カーボンニュートラルの点でも注目されている材質で、バガスを原料とした紙は「バガス容器」として、フードデリバリーの使い捨て容器などで、近年活用されています。 |
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ハブ |
「拠点」の意味で、現在多く使われています。「ハブ空港」というと「海外旅行での飛行機の乗り換え空港」というイメージで思い浮かびますが、これはさまざまな航空路線が乗り入れていて、そこを基にして乗り継ぎがしやすいという「拠点」であるからです。
元々「ハブ(Hub)」とは、例えば自転車タイヤだと「スポークを車輪の中心でまとめているところ」を指す言葉でした。「多方面に放射状に伸びているものを中心でまとめる」という意味より、多方面で使われるようになったと思われます。
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ヒートポンプ |
直訳すると「熱をくみ上げるもの」となりますが、「空気などからくみ上げた熱を移動させ、熱エネルギーを得る」という機器のことで、その熱をくみ上げて運ぶために、流体である「冷媒」を使うところが特徴です。身の回りで普段使っているエアコンは、この仕組みをつかっている代表例です。
ヒートポンプの仕組みを知るのに、大事な物理の原理が2つあります。
- 熱は、温度が高いところから低いところに移動する。
- 物質は、圧縮すると高温高圧になる。逆に膨張させると低温低圧になる。
冷媒は、自分より温度が高い空気から熱を吸収し、蒸発します。移動する途中で圧縮され、さらに高温高圧になった冷媒は、今度は自分より温度が低い場所に出ると、熱を放出して液体に戻ります。液体になった冷媒の圧を下げると膨張し、温度が下がりますので、また空気から熱を吸収できる…というサイクルが、ヒートポンプの仕組みです。エアコンで考えると、「熱を得るのが外、放出する場所が室内」なのが「暖房」、「得るのが室内、放出が外」が「冷房」となるわけです。エアコンの他、放出した熱を使って水を温めるシステムは「エコキュート」として一般利用されています。
ヒートポンプの仕組みの中で電力を使うのは、冷媒の循環と加圧減圧の部分だけです。電気エネルギーを直接、温度を変化させるエネルギーに使っていないというところが省エネであり、脱炭素化につながると評価されています。
但し、一般的に冷媒は「熱を吸収しやすい物質」ですので、無秩序に放出してしまうと逆に温暖化を進めてしまうことになります。冷媒の一番の代表例はフロンですが、その温暖化係数は二酸化炭素(CO2)より数千から数万倍と桁違いに高いので、管理には細心の注意が必要です。
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プラスチック(合成樹脂) |
もともと樹脂とは「主に植物から取れたねばねばした脂(やに)」のことですが、同じような性質のものを、石油などを原料として合成したのがプラスチック(合成樹脂)です。
簡単に形を作ることができ、電気を通さず腐食しづらい、さらに多くの種類が低価格で作れるということで、私たちの生活には欠かせないものになっています。
以下のように、使用用途に合わせて、たくさんの種類が開発されています。
【熱可塑性プラスチック】熱を加えることで柔らかく或いは液状になり、冷えると固まります
- 汎用プラスチック:加工がしやすい上、比較的安価です。身の回りの多くの製品に使われています。
- ポリエチレン(PE):やわらかくて軽い レジ袋・食品包装
- ポリプロピレン(PP):耐熱・耐薬品性が高い 弁当容器・ペットボトルキャップ
- ポリ塩化ビニル(PVC):耐久性・加工性が高い 水道管・壁紙
- ポリスチレン(PS):軽くて加工しやすい カップ麺容器・発泡スチロール
- ポリエチレンテレフタレート(PET):透明性・強度が高い ペットボトル・合成繊維
- ポリエチレンフラノエート(PEF):[バイオマスプラスチック] ガスバリア性・透明性高い PETと同等
- アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS):衝撃・耐熱・耐薬品性が高い ブロック・プラモデル
- 生分解性プラスチック:微生物の働きで分解されます。
- ポリ乳酸(PLA):[バイオマスプラスチック(植物由来)] 堆肥化可能 3Dプリンター材料・農業資材
- ポリヒドロキシアルカノエート(PHA):[バイオマスプラスチック(微生物由来)] 海水でも分解 食品容器・漁具
- エンジニアリングプラスチック;特定の性能が強化されています。工業用に多く用いられます。
- ポリカーボネート(PC):衝撃に強く透明度高い 飛行機の窓・防弾ガラス
- ポリアミド(ナイロン)(PA):強度・耐摩耗性・自己潤滑性が高い 繊維・機械部品
- スーパーエンジニアリングプラスチック:耐熱性・耐薬品性・強度などが特に高く、過酷な状況でも使いづづけられます。
- ポリエーテルケトン(PEK):耐熱性・耐薬品性が高い PEEKと比べ耐熱性は劣るが、成形性は良い 航空宇宙機器
- ポリエーテルエーテルケトン(PEEK):超高耐熱 耐薬品性・自己潤滑性が高い 航空宇宙機器
- 液晶ポリマー(LCP):高流動性・高寸法精度 電子部品
- ポリイミド(PI):耐熱性はプラスチック内で最高 宇宙関連機器
- テフロン(PTFE):特に耐薬品性が高い 高非粘着性 化学配管・フライパン
【熱硬化性プラスチック】一度固まったら硬いままであり、再び熱を加えても液状にはなりません
- メラミン樹脂(MF):耐熱性・電気絶縁性が高い 食器・配電盤の部品
- フェノール樹脂(PF):耐熱性・耐薬品性が高い 電気電子部品・自動車部品
- エポキシ樹脂(EP):接着性、強度が高い 接着剤・塗料
- ウレタン樹脂(PUR):熱可塑性を持つ種類もある 弾性・耐摩耗性が高い 断熱材・クッション材
プラスチックの「腐食しづらい」特性は非常に大きな利点ですが、「自然に戻りづらい」ということでもあり、ごみの問題につながります。特に海に流れ出して微細化されたものは「マイクロプラスチック」と呼ばれ近年、生物の体内に取り込まれる可能性について世界中で問題視されつつあります。解決策の一つとして、微生物により分解される(生分解性)プラスチックなどの開発もありますが、主な原料となる石油が有限であることも考えて、回収・再利用できるような仕組みづくりが更に必要になってくると思われます。
また、カーボンニュートラルを進める中で、バイオマスを原料とした「バイオマスプラスチック」の開発も進んでいますが、こちらは「必ず生分解性プラスチックではない」ということも、注意が必要です。
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プラチナ(Pt) |
プラチナ(Pt)は「世の中にある量が少ないので、非常に高価」な、いわゆるレアメタルです。「錆びずにアレルギーも起こしづらい」という性質から、アクセサリーに多く用いられることで一般には知られていますが、化学の世界では「安定して優れた触媒」として用いられることが多い金属です。
触媒として身近にあるのは「車の排気ガス浄化装置」「燃料電池」ですが、これらの利用場面ではPtが被毒しやすい一酸化炭素(CO)も発生しやすいということもあり、他の金属と合わせた合金にすることで対策がされています。
- 三元触媒(Pt・Pd・Rh:プラチナ・パラジウム・ロジウム):
車の排気ガスの中のCO、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)を除去します。
- PtRu/C(プラチナ・ルテニウム):
Ruの働きでCOからの被毒耐性が高く、メタノール酸化反応(MOR)があることから、 直接メタノール燃料電池(DMFC)で多く使われます。アノード触媒向き。
- PtRh/C(プラチナ・ロジウム):
高温や酸に強く、またCOによる被毒もある程度防ぎます。 センサーや化学反応用の触媒に使われますが、RhもPt以上に高価です。
- PtCo/C(プラチナ・コバルト):
酸素還元反応(ORR)で高い性能が出ます。カソード触媒向き。 車両搭載の燃料電池に用いられています。
※「 /C 」とは、炭素粒子(通常はカーボンブラック)上にPt合金の粒子が分散されていることを表し、炭素(C)が触媒の性能を高めます。
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フラン・フルフラール・ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)・ビフラン化合物 |
 | フランは4つの炭素と1つの酸素の化合物で、五角形になっている構造が特徴です。 |
これにアルデヒド基(-CHO)が付いたものが「フルフラール(C5H4O2)」で、トウモロコシの芯やバガスといったバイオマスより取り出せ、フラン樹脂の原料になります。 |  |
アルデヒド基とヒドロキシメチル基(−CH2OH)が付いたものは「ヒドロキシメチルフルフラール(C6H6O3):HMF)で、こちらもフルクトース(果糖)などが含まれるバイオマスより取り出せます。 |  |
また、二つのフラン環を含む化合物のことを「ビフラン化合物」といいます。「ビ」には「2つ」という意味があります(右図は2,2'-ビフラン)。 |  |
 | ちなみに、高校化学で登場する六角形は「ベンゼン」ですが、フラン類はこれと同じ「芳香族炭化水素」の仲間です。 |
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ポリエチレンフラノエート(PEF : Polyethylenefuranoate) |
フルフラールやヒドロキシメチルフルフラール(HMF)から合成されるフランジカルボン酸(FDCA)を基にして作られるプラスチック。フルフラールやHMFはトウモロコシの芯やバガスを原料として作られるので、「100%バイオマスを原料としたプラスチック」といえます。
現在、「ペットボトル」の原料として主流となっているのはポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)です。「ペットボトル」の「ペット(PET)」も、ここから由来しています。
PETは「透明性があり、軽くて加工しやすく、食品に対して安全性が高い」、そして「リサイクルしやすい」という利点があります。再加工によって他の製品に転化しやすいこともあり、ペットボトルのリサイクルが循環化社会への意識づけの基になった部分は大きいと思われます。
ただし、PETは原料が石油であり、長い目で見れば環境への影響は避けられません。
ポリエチレンフラノエート(PEF)の場合、原料は完全にバイオマスです。PETに似ており、それ以上に容器として優れている特性もあるため、更に発展して使える可能性があります。
なお「バイオPET」というものもありますが、これは「PETを作る材料の一部に、バイオマス由来のものを使っている」ということなので、PEFとは異なります。
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ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride) |
プラスチックの一種で、化学式では(C2H3Cl)nとなります。
「ポリ」とは「多くの」という意味がありますので、名前より「塩化ビニル(C2H3Cl)という塊がたくさんある」と読み取れます。また化学式からは、「(▲)n」は「▲がたくさん繰り返しでつながっている」という意味がありますので、「C2H3Clが、たくさん繰り返し、数珠つなぎになっている物質」ということがわかります。
火や化学物質に強く、加工がしやすく安いということで、私たちの身近でもパイプやビニール袋などの材料として使われています。
構造に塩素(Cl)を含んでいるので、燃やすとダイオキシンを多く発生させると一時期問題になりましたが、研究により「燃焼温度のコントロールを行うことで発生を抑制できる」ことも明らかになっています。また「リサイクルしづらい」という点も指摘されていましたが、近年は技術開発も進んできています。
なお同じに使ってしまいがちですが、厳密には「ビニール袋」は「PVC」、「ポリ袋」は「ポリエチレン(PE):(C2H4)n」と、原料が異なります。
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ボールミル |
「ミル」とは「粉に挽く」「細かく砕く」という意味がありますが、それをボールで行うのがボールミルです。
円筒形の入れ物に、細かくしたい材料と、金属製などの固いボールを一緒に入れて、くるくる回します。すると筒の中で転がったボールが材料にぶつかって、どんどん砕いて細かくしていきます。筒を回すことでボールも材料もまんべんなく動くので、結果として均一できめ細やかな粉ができます。
できる粉の大きさはマイクロメートル(1μm = 0.001 mm)からナノメートル(1nm = 0.001 µm = 0.000001 mm)と非常に小さく、化学材料や製薬の分野で用いられています。
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マイクロ小水力発電 |
ダムなどの大きな設備を使わず、身近な水の流れを利用した発電のことを指します。
発電量としては、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」では、「出力1,000kW以下の小規模な水力発電」を「小水力発電」と定義しています。
例えば、農業用水路、道路脇の側溝、上流域の小さな川など外だけでなく、工場や浄水場などの設備、また一般家庭の排水路や下水路など、「水の流れ」があれば設置できる可能性があり、設置費用も規模も大きくありません。
また稼働時に二酸化炭素(CO2)を排出しません。水素(H2)やアンモニア(NH3)などは燃焼してもCO2を出しませんし、バイオマスを原料としたBio-fuelなどはカーボンニュートラルを考えるうえで重要な燃料です。しかし燃焼時の計算でCO2排出を減らせても、それらの燃料を製造する過程でCO2を排出していては、元も子もありません。
水力発電のような再生可能エネルギーを利用した、製造過程でもCO2を排出しない「グリーンエネルギー」が求められてきている今、たとえ小規模でも環境に優しい発電の力が必要とされています。
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メタネーション |
二酸化炭素(CO2)と水素(H2)から、メタン(CH4)を合成する技術のことです。化学反応式では、以下の通りになります。
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O
例えば、化石燃料である天然ガスは、成分の多くはCH4であり、都市ガスの原料として使われています。都市ガスを使うとCH4が燃焼して、CO2が発生します。
CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
ここで発生したCO2を、またCH4に戻す技術が「メタネーション」です。
メタネーションを利用すれば、天然ガス燃焼で発生したCO2をまたCH4に戻し、それを天然ガスに置き換えて利用することができるという「カーボンニュートラル」が実現します。「置き換え」が可能なので、設備などを変更する必要がなく、経済的でもあります。
更に、合成に使うH2もグリーン水素、つまり「再生可能エネルギーを利用して作った水素」にすれば、もっと温暖化防止を進めることになります。H2は「水の電気分解(2H2O → 2H2 + O2)」で作れますので、その電気を太陽光発電などを利用した「再生可能エネルギー」由来のものにすることで可能です。 |
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メタン(CH4) |
1個の炭素原子(C)に、4個の水素原子(H)が結合してできた炭化水素です。常温では気体で燃焼しやすく、天然ガスの主成分として知られています。
メタン菌を使った発酵でバイオマスより取り出す(メタン発酵)、また二酸化炭素(CO2)とグリーン水素(H2)から合成できるなど(メタネーション)、天然ガスを原料とした都市ガスの代替燃料になり得るということで、カーボンニュートラルを考える上で重要な物質として注目されています。
しかしCH4自体も温室効果ガスであり、しかもその温室効果はCO2よりもはるかに大きいと考えられているので、管理には注意が必要です。
また、「農畜産業」での排出が多いことでも知られます。牛や羊のげっぷにCH4が多く含まれていることが一時期話題になりましたが、他の家畜の糞尿にも多くのCH4が含まれています。また、水を張った状態の田の泥などで、嫌気性菌であるメタン菌が活性化することでCH4が発生します。但し、糞尿はバイオマスとしての資源価値が注目されており、メタン発酵による活用を進めようとしています。
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メタン発酵 |
「酸素が嫌いで、有機物からメタンを作る」という特性を持つメタン菌を利用し、バイオマス資源からメタン(CH4)を作り出すことです。「カーボンニュートラル」だけでなく、地域内でのエネルギーや資源の循環活用に貢献できると期待されています。
バイオマス資源の中には、汚泥や動物の糞尿など「臭い」が問題となるものも多くあります。しかしメタン発酵の場合、メタン菌は酸素が無いところこそ元気に活動しますので、完全に空気の入れ替えがない場所で発酵を行うことができ、それゆえに臭いが外に漏れることがありません。
CH4を取り出した後のバイオマスの残りも、アンモニア(NH3)と水分を取り除くことにより、安定した固形燃料へ変換させることができます。
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メチレンブルー |
名前にもある通り、鮮やかな青色をした化学物質です。化学式はC16H18N3SCl。
観賞魚の治療に使われる抗菌剤として市販されていますが、過剰摂取することで中毒を起こします。
一目で状態がわかるので、水の浄化実験に用いる色素などにも選択されています。
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リチウムイオン電池 / ニッケル水素電池 |
両方とも「二次電池」という、充電ができる電池の種類で、使われている材料は違いますが「酸化還元反応」を利用した仕組みになっています。
温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)排出削減対策として、近年「電気自動車(EV)」「ハイブリッド車(HEV)」などの利用が進められてきています。EV・HEV共に重要視されるのが、動かすエネルギーである電気を溜める「バッテリー」の性能向上です。「大量の電気を速く安全に貯める」「長時間長距離を安定して使える」「劣化しづらい構造で安く作る」ということを極めることで、ガソリン車と肩を並べられる性能になるためです。
まず世界初の量産ハイブリッド車に採用されたのは、自動車に積んでも安全性が高く、繰り返しの充放電に強い「ニッケル水素電池(Ni-MH)」でした。
 <ニッケル水素電池>放電時 |
Ni-MHは、正極に「ニッケル酸化物」、負極に「水素吸蔵合金(MH)」、電解質に「水酸化カリウム水溶液(KOH)」が使われています。
MHとは「水素(H)が金属に入って溜まりやすい性質を活かした合金」で、水酸化イオン(OH-)により酸化が起こり、水素イオン(H+)と電子(e-)を放出します。
このe-は回路を、H+は電解質中を流れて正極のニッケル酸化物に届き、ここで還元反応が起こります。これがNi-MH内部での動きです。
発火などのリスクが低く、高熱に強い特性を持ちます。家庭で使える乾電池型の製品でも一般化されています。
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その後「リチウムイオン電池」が技術発展し、特にスマホやノートPCなどのモバイル機器で大きく利用されるようになりました。自動車関係でも、EV・HEV・プラグインハイブリッド車(PHEV)への搭載が増えてきています。
リチウムイオン電池は、正極に「リチウムと金属の酸化物」、負極に「炭素」、電解質に「有機溶媒」が使われています。
もともと負極から出たがっているリチウムイオン(Li+)とe-は正極と負極を回路で繋ぐことで、それぞれ電解質と回路を通って正極にたどり着き、還元反応が起きて落ち着きます。これがリチウムイオン電池内部の動きです。
軽量で長時間使え、更に長寿命と、二次電池の中で現在一番高性能と評価されています。正極材料にはコバルト酸リチウム(LiCoO2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO4)などがあり、使用用途により使い分けられています。
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 <リチウムイオン電池>放電時
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しかし両方とも電解質として「液体」をつかっており、液漏れの危険性を常に持っています。特にリチウムイオン電池には、対策は進んでいるものの、以下の要注意点があります。
- リチウム(Li)自体、水と反応すると熱とガスを発生させるという危険性を持つ。
- 電解質は上記理由のために有機溶剤を使うが、その溶剤自体に可燃性がある。
- セパレータが壊れて正極と負極が直接つながった時に(内部短絡)、大きな電流が流れての発熱や発火の危険性が高い。
近年は以上の点を解決し、更に大容量を可能にする技術として、リチウムイオン電池の発展形である「全固体電池」の開発が進められています。
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リン酸鉄リチウムイオン電池 |
リン酸鉄リチウム(LiFePO4:LFP)を正極に、炭素(C)を負極にした、リチウムイオン電池の一種です。
のちにノーベル化学賞を受賞する吉野 彰博士が80年代に開発したリチウムイオン電池は、「安全で高性能な充電池」と評価され、その後の電気機器・通信・運輸の世界に大きな革命をもたらしました。現在のモバイルやIT機器の発展は、リチウムイオン電池無しでは語れないでしょう。
その後「正極にリチウム化合物、負極に炭素」という基本形を保ちつつ、より高性能・大容量・安全な充電池開発のための、正極の「リチウム化合物」の研究は盛んに行われています。LFPもこうして開発された物質のひとつです。
LFPは、先に開発されたコバルト酸リチウム(LiCoO2)と比べ「安全性が高い」「劣化しづらく長寿命」「コストが安い」という利点があります。熱に強く丈夫であり、暴走を起こす心配も少ないことが安全性につながっていることもあり、電気自動車(EV)などの大型機器への利用が主に進められています。
一方「同じ大きさでも、蓄えられる電気量が少ない」という点もあり、小型の機器(スマートフォンやノートパソコン)には、LiCoO2の方が向いているといえます。
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冷媒 |
冷蔵庫やエアコンなど、ヒートポンプのシステムの中で循環している流体です。「多くの熱を吸って蒸発しやすい」という「熱を運搬する効率の高さ」、また「毒性が少ない」という特性を持つ物質が選ばれます。
現在、冷媒として使われている多くは、「フロン(フルオロカーボン)」という、炭素(C)とフッ素(F)の化合物です。20世紀に入ってから「とても効率がよく安全」ということでクロロフルオロカーボン(CFC)が大量に生産・利用されましたが、「オゾン層破壊」「地球温暖化」の原因物質であることがわかり、対策改良が進められました。
- オゾン層破壊
大気中では安定しているフロンも、成層圏までいくと紫外線により分解され、含まれている塩素(Cl)がオゾン層を破壊します。破壊係数はODP。
- 地球温暖化
フロンはずっと温室効果を持ったまま存在する「温室効果ガス」です。温暖化係数はGWP。
CFC(クロロフルオロカーボン) 第一世代。特定フロン。 ODP:高 GWP:高 不燃・無毒 |
最初に開発されたフロンで、「燃えにくく毒性もなく、安定した物質」ということで、世界的に大きく利用が広がりました。しかし含んでいるClがオゾン層破壊に影響していると判明したため、1987年のモントリオール議定書により「特定フロン」として認定され、全面廃止が決定されました。
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HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン) 第二世代。代替フロン→特定フロン。 ODP:中 GWP:高 不燃・無毒 |
水素(H)の働きでODP値は抑えられていますが、こちらもClを含んでいますのでオゾン層破壊能力を持っています。CFCが特定フロンになったため暫定的に「代替フロン」として使われましたが、こちらもモントリオール議定書によって2020年に全面廃止され、「特定フロン」になりました。
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HFC(ハイドロフルオロカーボン) 第三世代。代替フロン。 ODP:0 GWP:高 不燃・無毒 |
Clがなくオゾン層破壊を破壊しないことが確認されているため、現在冷媒として広く使われています。しかしGWPは非常に高いため、地球温暖化防止の点では大きな問題点を抱えています。
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HFO(ハイドロフルオロオレフィン) 第四世代。 ODP:0 GWP:低 可燃性・毒性あり |
オゾン層を破壊せず、地球温暖化を起こしづらいということで、今までのフロンの問題点をクリアしています。しかし「燃えやすい」「人体に影響する毒性を持つ」など安全性に難があり、また第三世代までのフロンより効率は下がります。
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フロンの問題が取り上げられるようになったことで、「アンモニア(NH3)」「二酸化炭素(CO2)」「プロパンガス(C3H8)」なども冷媒として検討されるようになりました。しかし「温室効果」「安全性」「効率」の点で、それぞれ問題点を持っています。
現時点では、「環境保護」「安全性」「高効率」のすべてを満たしている冷媒は、見つかっていません。
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