太陽の熱を自分で蓄え、放出する働きを持つ気体のことをいいます。
太陽からの熱は地球の大気を温めて、その熱は赤外線として、また宇宙に向かっていきます。温室効果ガスは、その赤外線を大気中で自分に蓄え、更に放出し、大気の温度を上げる働きを持ちます。
温室効果ガスがない場合、地球の表面温度は氷点下になると考えられています。広く知られているのは二酸化炭素(CO2)ですが、地球の大気に存在する割合は0.04%です。でもそのわずかな存在であるCO2のこの働きのおかげで、地球は生命が暮らしやすい、適度な温度を保っていられていることになります。
今問題になっている「地球温暖化」は、特に産業革命以降に化石燃料を大量に使うことで、人類が排出する温室効果ガスの量が急増したことにより、大気中に熱が蓄えられる量が増えたことが原因と考えられています。つまり「温室効果ガスという存在自体が悪」という訳ではなく、その存在バランスが崩れたことが問題である訳です。そのバランスをどう戻していくか、様々な方向での技術開発での解決が求められています。
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物質名 | 地球温暖化係数 | 発生源 |
二酸化炭素(CO2) | 1 | ・化石燃料や炭水化物の燃焼 |
メタン(CH4) | 25 | ・天然ガス・家畜のげっぷ・泥中の微生物活動 |
一酸化二窒素(N2O) | 298 | ・燃料の燃焼・工業活動・窒素肥料の利用 |
代替フロン(HFCsなど)※ | 1430など(HFCs) | ・冷却システムの冷媒・スプレー缶のガス・半導体洗浄剤 |
※「フロン類」は20世紀に入り、高性能な冷媒や溶剤として多く用いられてきました。ただ一部の「特定フロン」がオゾン層を破壊するという点が問題視され全廃されたため、代わりに使われるようになったのが「代替フロン」です。しかし「代替」になっても、温暖化係数がCO2より数千から数万倍と桁違いに高いことは変わらないため、厳重な管理が必要です。 |
化石燃料 |
化石を元に作られている燃料のこと。長い年月をかけて、動植物の死骸が地中で変化してできたと考えられています。石炭・石油・天然ガスなどがあり、燃料や化学製品の原料として、特に近代での人類の活動の中で欠かせない物質です。
成分としては、様々な炭化水素が主ですが、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)も含んでいます。燃やすと二酸化炭素 (CO2) の他、窒素酸化物 (NOx) 、硫黄酸化物 (SO2)も発生しますが、CO2や、NOxの一種であるN2Oが温室効果ガスであるだけでなく、NOxやSO2は大気汚染・酸性雨などの環境破壊、呼吸器疾患などの健康被害を引き起こす要因となる物質です。
また化石燃料は有限であると考えられており、燃焼して発生したCO2が自然に化石燃料へ再生されることもないため、将来へ向けた持続可能性の点からも、これからの使用量や利用方法について、早急な検討が必要となります。 |
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カーボンアロイ触媒 |
カーボン(炭素:C)を原料とした触媒です。
現在、燃料電池の触媒として用いられることが多いのは白金(プラチナ:Pt)です。
Ptは化学の世界では「安定して優れた触媒」として用いられることが多い物質ですが、一般としても「錆びずにアレルギーも起こしづらい」という性質からアクセサリーに多く用いられ、そして「世の中にある量が少ないので、非常に高価」です。
カーボンアロイ触媒は、性能を落とすことなく安価にPtの置き換えとして利用することができるので、燃料電池普及とPt資源保護、合わせての効果に期待されています。
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カーボンニュートラル |
GXの説明に出てくる「カーボンニュートラル」とは、「二酸化炭素が【排出される量】と【吸収する量】を同じにする取り組み」のことを指します。
「植物は昼間、水(H2O)と二酸化炭素(CO2)を吸収して、光のエネルギーを使ってでんぷん(養分)と酸素(O2)を作る」ということは、小学生の理科の授業で教わるので、皆さまご存じと思います。その働きが「光合成」ということは、中学生で習います。
化学反応式で書くと、以下の通りになります。
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2 (※)
このC6H12O6は「グルコース」という物質で、これがどのような形で集まっているかで、イモなどでおなじみの「でんぷん」になったり、植物の体をつくる材料となる「セルロース」になったりします。
植物の体にある「でんぷん」や「セルロース」を作っている「グルコース」は、上で書いた通り、炭素(C)・酸素(O)・水素(H)からできています。そのCは、「光合成」で吸収したCO2の「C」からもらっています。
逆に植物を燃やすと、グルコース中の「C」が空気中の酸素と結びついて「CO2」になり、空気に混ざります。
C6H12O6 + 6O2 → 6CO2 + 6H2O
そして、その空気中のCO2を、また植物が光合成で吸収します(※)。
このように、植物を燃料にすることは、植物と空気の間でCO2がお互いやり取りされる関係なので、「二酸化炭素が排出される量と吸収する量が同じ」、つまり「カーボンニュートラル」となります。
しかし、これが石油や石炭などの「化石燃料」の場合は、どうでしょうか。
化石燃料も、主に炭素(C)と水素(H)、酸素(O)からできていますので、燃やすと空気中の酸素と結びついて「CO2」ができ、空気に混ざります。
例えば、ガソリンはいろいろな物質(主に炭素数4 - 10の炭化水素)が混ざっているのですが、例として炭素数5(n=5)のC5H12(ペンタン)で燃焼を考えると、
C5H12 + 8O2 → 5CO2 + 6H2O
となり、CO2が発生することがわかります。
では植物と同じく、排出されたCO2は自然と化石燃料に戻るでしょうか?いいえ、これは自然には戻りません。また、化石燃料から排出されたCO2を、植物は大きく余分に吸収してくれません。
なので、対策をせず化石燃料を使い続けると、空気中のCO2も増え続けるということになります。そして、現在地球上で使われている多くは化石燃料です。「化石燃料の利用を減らす」ということも、カーボンニュートラル実現には大きな課題となります。
化石燃料由来のCO2削減については現在、「Bio-fuel・E-fuelの利用や、アルコールのドロップインで、化石燃料を使う割合を減らす」「化石燃料利用で発生したCO2を外に逃がさず、地中に戻す」「CO2を更に、メタン(CH4)などの燃料に変換させる(メタネーション)」などの技術開発が行われています。
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グラフェン |
六角形を作った炭素原子が、隙間なくハチの巣のようにつながっている、厚みが炭素原子1個分の板状の材料。この板が数多く重なっているのが、鉛筆の芯である「黒鉛(グラファイト)」です。
熱や電気を伝える力や速さに優れており、薄さから透明性と柔軟性も得られるということで、特に電気製品への活用が期待されています。
このハチの巣のような構造は「ハニカム構造」と言われ、「一定材料量を利用して、一番強度が出せる構造」であり、グラフェンの「薄く軽量だが、強度は極めて高い」という性質につながっています。
なお、グラフェンは「板状」ですが、この炭素のハニカム構造が円筒形になったのが「カーボンナノチューブ」となります。
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好熱菌・メタン菌 |
好熱菌とは、名前が表している通り「熱がある状態」である、55℃以上で生育できる微生物です。
またメタン菌は「酸素が嫌いで、有機物からメタン(CH4)を作る」という特性を持っています。
両方とも「古細菌(アーキア)」という、一般で言われる細菌(バクテリア)とは違う生物の種類に多く所属しています。
古細菌には他にも「高度好塩菌(塩湖など、塩化ナトリウム(NaCl)が多いところにも存在)」など、人間から見たら過酷な環境に住める種類が数多くいます。
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次世代モビリティ |
「次世代の移動手段」のことを言います。
「モビリティ(Mobility)」には「移動のしやすさ」という意味がありますので、詳細に言うと「現在よりも更に優れている、新しい技術の移動方法」ということになります。例えば自動運転やドローン、「パーソナルモビリティ」と呼ばれる1~2人乗りの超小型電気自動車などがそれにあたり、日々開発・実用化がされています。
群馬大学でも「次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS) 」にて、主に「自動運転」「スローモビリティ」について研究開発が行われています。
なお「スローモビリティ」とは、「時速20km未満で公道を走ることができる電動車、およびそれを使ったサービス」のことを指します。経済成長の中で、今まで求められてきたのは「速く、多数を運ぶ移動手段」でした。しかし地域コミュニティ内での移動では、それを極めることが一番ではなく、住人や環境に合わせた「ゆっくりと、少人数で」という移動手段も必要と見直されてきています。既存手段より省エネルギーであるスローモビリティは、更に太陽光や水力発電などによるグリーンエネルギーを利用することで、温暖化防止にも大きく貢献できます。
群馬大学理工学部がある桐生市では実際に、開発に参加した「MAYU 」が市街地で活躍しています。
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触媒・触媒被毒 |
自分の形を変えず、周りの化学反応を進めるのを助ける役割をする物質を「触媒」といいます。
「二酸化マンガン(MnO2)にオキシドール(うすい過酸化水素水:H2O2)を加えると、酸素(O2)が発生する」という理科の実験は、記憶にあると思います。
この場合の化学反応式は
2H2O2 → 2H2O + O2
となります。
「あれ? MnO2は化学反応に関係していないの?」となりますよね。
実はH2O2は不安定な物質で、「Oを離して、安定しているH2O(水)という形になりたい!」と、ゆっくりながら自分で自身を分解しようとしているのです。理科の実験の時は、Oを離す速さを手伝う物質として「MnO2」を入れています。このMnO2の役割が「触媒」となります。
体の中で働く触媒は「酵素」と呼ばれ、食品の発酵や医薬品の分野でも活用しています。
なお触媒は、他の化学反応を助けるのには自分の姿を変えませんが、「触媒毒」といわれる物質と出会ってしまうことで反応し、働けなくなるということがあります。これを「触媒被毒」といいます。
燃料電池の場合、触媒毒は燃料として送られる水素(H2)と一緒に含まれている不純物が考えられます。触媒毒の種類を見極め、被毒に耐える触媒の研究が行われています。
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水素 |
水素原子(H)が二つ組み合わさってできている水素(H2)は、空気よりとても軽く、また非常に燃焼・爆発しやすいという性質があります。また下の化学反応式通り、燃やしても二酸化炭素(CO2)を発生させませんので、温暖化防止策を考えるには重要な物質です。
2H2 + O2 → 2H2O
2021年に開催された「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」では、史上初で聖火台の燃料としてH2が採用され、また車両や施設で燃料電池が多く活躍しました。しかも、ここで使われたH2は水(H2O)を再生可能エネルギーで電気分解した、製造時にもCO2を出さない「グリーン水素」とのことで、環境や持続可能性を考慮した「新しい五輪」を印象付けたものとなりました。
但し、H2を実際に生活の中に取り込むには、「安全性」「専用設備の新規設置」などが課題です。「爆発しやすく、しかもその威力が大きいH2を、どのように運び保存するか」「今までに使っていた機械や設備を、どのようにH2を利用できる形に変えていくか」を検討する必要があります。
なお、以前は浮かぶ風船の中に水素ガスを使っていましたが、危険ということで日本では禁止され、現在では安全なヘリウムガス(He)が使われています。
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石油・天然ガス |
石油は化石燃料の一種で、炭化水素の他、硫黄(S)、窒素(N)、酸素(O)も含む油。石油は精製することで、「天然ガス」「ガソリン」「灯油・軽油」などに分けられます。
天然ガス |
メタンを主成分として、エタン・プロパンなど炭素数2~5の炭化水素を多く含む混合気体。冷却して液体にしたものは「液化天然ガス(LNG)」と呼ばれます。燃焼しても二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)の排出が比較的少ないため火力発電や、また日本では都市ガスとして多く使われています。 |
ガソリン |
原油から精製された「ナフサ」から、炭素数4~10のものを精製した炭化水素混合物。常温で揮発性が高く、ガソリン用自動車の燃料として多く使われています。 |
灯油 |
原油から精製された「ケロシン」から、炭素数9~15のものを精製した炭化水素混合物。他の石油由来燃料より取り扱いが比較的容易なので、家庭用暖房器具に多く使われています。 |
ジェット燃料 |
原油から精製された「ケロシン」から精製され、航空用のジェットエンジンに使われます。灯油とほぼ同じ成分であるものの、規格は更に厳しくなっています。 |
軽油 |
原油から精製される、炭素数10~20の炭化水素の混合物。主にディーゼルエンジン用の燃料として使われています。日本では、ガソリンより税金が安いという利点もあります。 |
重油 |
石油より上記の石油製品を精製した後の残渣、或いはそれを精製した炭化水素化合物をいいます。燃料としては船舶のエンジンやボイラーに用いられます。燃料としての重油を精製した残りがアスファルトとなります。 |
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セルロース・ヘミセルロース |
植物の体を作っている物質です。
その存在比は樹木の場合、40~50%が「セルロース」、20~25%が「ヘミセルロース」、20~35%が「リグニン」と言われています。
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セルロース |
構造は基本的にグルコース(C6H12O6)だけでできています。地球上で最も多く存在する炭水化物で、人間が食べる食物繊維の多くはセルロースです。 食物以外でも紙、綿として利用されています。
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ヘミセルロース |
構造にグルコース以外の様々な糖も入っている炭水化物です。セルロースと比べて、まだ資源として利用される機会が少ないバイオマス原料です。 |
リグニンは他の2つとは異なり、フェノール性化合物です。木質素ともいいます。 |
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全固体電池 |
中に液体がなく、固体の物質のみで電子のやり取りができる電池のことです。
「レモンに金属板を刺して電池が作れる」という実験を見たことがありますか?
レモンを半分に切って、銅と亜鉛の板を一枚ずつ刺し、その間に電気コードと電球をつなぐと、電球が光るものです。
この原理ですが、レモンの果汁の中で亜鉛が溶けて亜鉛イオン(Zn2+)と電子(e-)に分かれ、e-が電気コードを伝わって銅の方に移動します。このe-の動きが「電流」となり、電球が光るわけです。
このレモン電池に大事なのは「亜鉛を溶かすレモン果汁」、つまり「電解質の存在」です。今まで発明された多くの電池の仕組みは、まず「電解質が液体である」ことが大事でした。レモン電池も、乾燥したレモンピールで試しても成功しません。
しかし近年、電解質部分も固形にした「全固体電池」が求められるようになりました。化石燃料から電気にエネルギー利用を変えていく必要が出てきた中で、大容量でなおかつ安全な電池が必要と考えられているためです。
例えば液体電解質の場合、漏れの心配や構造上の課題での故障がありますが、固体電解質にするとその問題は解消されると考えられています。
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炭化水素 |
炭素原子(C)と水素原子(H)による化合物。構造で一番単純なものはCが一つのメタン(CH4)で、炭素数が増えていく毎に結合の形も複雑に変わっていくことが特徴です。例えば、Cがあと1つ増えた「Cが2個の炭化水素」となると、一気に数が増えて3種類になります。Cの数は変わらなくても、Hの数と形はかなり変わることがわかります。
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メタン(CH4) |
エタン(C2H6) |
エチレン(エテン)(C2H4) |
アセチレン(エチン)(C2H2) |
※「エチレン」は果物の成熟を促す植物ホルモンとして、「アセチレン」はガス溶接用のガスとして知られています。
この後、「Cが3個の炭化水素」はCが2個の時と同じ3種類ですが、更にもう一つCが増えた「Cが4個の炭化水素」となると、また数が増えて8種類になります。「Cが16個の炭化水素」にもなると、例えばすべての結合が単結合(-)のみ(二重結合(=)や三重結合(≡)を持たない)である「ヘキサデカン(C16H34)」だけでも10,000個以上の形が違う種類(異性体)が存在します。
また、炭化水素の状態は大まかにいうとCの数で変わり、目安としては常温常圧だと、Cの数が1~4くらいまでは気体、5~17くらいまでは液体、それ以上は固体となります。化石燃料である石油や天然ガスは、いろいろな種類の炭化水素が混ぜ合わさったものですが、このそれぞれの特性を利用して精製することで、様々な性質の燃料を取り出すことができます。
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中鎖脂肪酸 |
「脂肪酸」とは炭素(C)、水素(H)、酸素(O)からできていて、名前の通り体についている「脂肪」に大きくかかわっている物質です。
脂肪酸の種類は長さで分けることができるのですが、一般に食べられている油脂(オリーブオイルやラードなど)は「長鎖脂肪酸」、その半分ほどの長さのものは「中鎖脂肪酸」と呼ばれます。
中鎖脂肪酸にはカプリル酸、カプリン酸などがあり、ココナッツなどのヤシ科植物や牛乳、母乳にも含まれています。この中鎖脂肪酸100%で作られているのがMCTオイル(MCT:Medium Chain Triglyceride)で、近年食卓でもおなじみになっています。
炭素の数が8~12でできている中鎖脂肪酸は水になじみやすく、吸収された後分解されやすいとされ、生活習慣病改善などに効果があると期待されています。
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二酸化炭素 |
1個の炭素原子(C)と2個の酸素原子(O)による化合物。炭酸飲料のシュワシュワの泡やドライアイスの原料としても、身近に感じることができます。また、理科の授業でもおなじみの物質です。
存在確認(石灰水にストローで息を入れると濁る):Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O(水酸化カルシウムが炭酸カルシウムになって白濁します)
燃焼(アルコールランプを燃やす):2CH3OH + 3O2 → 2CO2 + 4H2O
実験的製法(石灰石に薄い塩酸を入れる):CaCO3 + 2HCl → CO2 + CaCl2 + H2O
光合成:6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
空気中に0.04%含まれており、その温室効果ガスとしての働きで、地球の大気は適温に保たれてきました。
しかし、近代の産業活動で化石燃料の使用が莫大に増え、それにより大気中のCO2濃度が上がったことで地球温暖化が引き起こされたと考えられているので、排出・循環対策が急務になった物質です。物質の温暖化能力を示す「地球温暖化係数(GWP)」という指標がありますが、これはCO2を基準の「1」として表しています。
温暖化対策の中で「カーボンニュートラル」が注目されていますが、これは「CO2が【排出される量】と【吸収する量】を同じにする取り組み」で、「カーボン」は「CO2中のC(Carbon)」を指します。
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燃料電池 |
「水素(H)」と「酸素(O)」を化学反応させて、電気を発生させる仕組みの電池です。
燃料電池の仕組みは「酸化還元反応」を利用していますが、簡単に言うと「水の電気分解」の逆になります。
水の電気分解は中学校の理科で習いますが、言葉通り「水(H2O)に電気のエネルギーを与えて、水素(H2)と酸素(O2)に分解する」というもの。化学反応式は以下の通りです。
2H2O → 2H2 + O2
一方、燃料電池の中では、これと逆の反応が起きています。「H2とO2を化学反応させて、H2Oと、電気のエネルギーを取り出す」というものです。化学反応式も逆になります。
2H2 + O2 → 2H2O
つまりCO2を発生させず、エネルギーを取り出すことができます。O2を空気中から得て、H2は再生可能エネルギーを利用して得られる「グリーン水素」にすれば、カーボンニュートラル達成に有効となる仕組みです。
燃料電池は「エネルギーの高効率利用システム」として実用化が進んでおり、自動車では「燃料電池自動車(FCV)」として、また家庭用には「エネファーム」として普及しています。
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バイオマス |
生物資源(bio)と量(mass)を合わせた言葉で、「再生可能で、今生きている生物から得られる有機物」「枯渇しない、生物からできた有機物。但し化石燃料を除いたもの」です。
生物、特に植物から得られる有機物(構造に炭素(C)を持っている化合物)は、光合成によって植物の中で作られるものなので、太陽光と水、二酸化炭素(CO2)、そして生きた植物がある限り、繰り返し作られ使える資源(再生可能)と考えられています。
「化石燃料」も「昔の動植物の死骸が、長い時間をかけて変化したもの」と考えられており、すると「生物由来の有機物」となりますが、こちらは燃やして発生したCO2が自然に化石燃料に戻ることはない、つまり「再生可能」ではないので、「バイオマス」ではありません。 |
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バガス |
サトウキビは砂糖の原料になるショ糖を絞ると、全体の25%が繊維として残りますが、その繊維を「バガス」といいます。その成分は「セルロース」「ヘミセルロース」「リグニン」で、現在は主に紙や家畜飼料の原料として使われています。
カーボンニュートラルの点でも注目されている材質で、バガスを原料とした紙は「バガス容器」として、フードデリバリーの使い捨て容器などで、近年活用されています。 |
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フラン |
 | 4つの炭素と1つの酸素の化合物で、五角形になっている構造が特徴です。食品に含まれていることで知られ、トウモロコシの芯やバガスといったバイオマスより取り出せます。
|  | ちなみに、高校化学で登場する六角形は「ベンゼン」ですが、これと同じ「芳香族炭化水素」の仲間です。 |
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ポリエチレンフラノエート(PEF:Polyethylenefuranoate) |
100%バイオマスを原料としたプラスチック。
現在、「ペットボトル」の原料として主流となっているのはポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)です。「ペットボトル」の「ペット(PET)」も、ここから由来しています。
PETは「透明性があり、軽くて加工しやすく、食品に対して安全性が高い」、そして「リサイクルしやすい」という利点があります。再加工によって他の製品に転化しやすいこともあり、ペットボトルのリサイクルが循環化社会への意識づけの基になった部分は大きいと思われます。
ただし、PETは原料が石油であり、長い目で見れば環境への影響は避けられません。
ポリエチレンフラノエート(PEF)の場合、原料は完全にバイオマスです。PETに似ており、それ以上に容器として優れている特性もあるため、更に発展して使える可能性があります。
なお「バイオPET」というものもありますが、これは「PETを作る材料の一部に、バイオマス由来のものを使っている」ということなので、PEFとは異なります。
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マイクロ小水力発電 |
ダムなどの大きな設備を使わず、身近な水の流れを利用した発電のことを指します。
発電量としては、「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法(新エネ法)」では、「出力1,000kW以下の小規模な水力発電」を「小水力発電」と定義しています。
例えば、農業用水路、道路脇の側溝、上流域の小さな川など外だけでなく、工場や浄水場などの設備、また一般家庭の排水路や下水路など、「水の流れ」があれば設置できる可能性があり、設置費用も規模も大きくありません。
また稼働時に二酸化炭素(CO2)を排出しません。水素(H2)やアンモニア(NH3)などは燃焼してもCO2を出しませんし、バイオマスを原料としたBio-fuelなどはカーボンニュートラルを考えるうえで重要な燃料です。しかし燃焼時の計算でCO2排出を減らせても、それらの燃料を製造する過程でCO2を排出していては、元も子もありません。
水力発電のような再生可能エネルギーを利用した、製造過程でもCO2を排出しない「グリーンエネルギー」が求められてきている今、たとえ小規模でも環境に優しい発電の力が必要とされています。
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メタネーション |
二酸化炭素(CO2)と水素(H2)から、メタン(CH4)を合成する技術のことです。化学反応式では、以下の通りになります。
CO2 + 4H2 → CH4 + 2H2O
例えば、化石燃料である天然ガスは、成分の多くはCH4であり、都市ガスの原料として使われています。都市ガスを使うとCH4が燃焼して、CO2が発生します。
CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
ここで発生したCO2を、またCH4に戻す技術が「メタネーション」です。
メタネーションを利用すれば、天然ガス燃焼で発生したCO2をまたCH4に戻し、それを天然ガスに置き換えて利用することができるという「カーボンニュートラル」が実現します。「置き換え」が可能なので、設備などを変更する必要がなく、経済的でもあります。
更に、合成に使うH2もグリーン水素、つまり「再生可能エネルギーを利用して作った水素」にすれば、もっと温暖化防止を進めることになります。H2は「水の電気分解(2H2O → 2H2 + O2)」で作れますので、その電気を太陽光発電などを利用した「再生可能エネルギー」由来のものにすることで可能です。 |
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メタン |
1個の炭素原子(C)に、4個の水素原子(H)が結合してできた炭化水素です。常温では気体で燃焼しやすく、天然ガスの主成分として知られています。
メタン菌を使った発酵でバイオマスより取り出す(メタン発酵)、また二酸化炭素(CO2)とグリーン水素(H2)から合成できるなど(メタネーション)、天然ガスを原料とした都市ガスの代替燃料になり得るということで、カーボンニュートラルを考える上で重要な物質として注目されています。
しかしCH4自体も温室効果ガスであり、しかもその温室効果はCO2よりもはるかに大きいと考えられているので、管理には注意が必要です。
また、「農畜産業」での排出が多いことでも知られます。牛や羊のげっぷにCH4が多く含まれていることが一時期話題になりましたが、他の家畜の糞尿にも多くのCH4が含まれています。また、水を張った状態の田の泥などで、嫌気性菌であるメタン菌が活性化することでCH4が発生します。但し、糞尿はバイオマスとしての資源価値が注目されており、メタン発酵による活用を進めようとしています。
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メタン発酵 |
「酸素が嫌いで、有機物からメタンを作る」という特性を持つメタン菌を利用し、バイオマス資源からメタン(CH4)を作り出すことです。「カーボンニュートラル」だけでなく、地域内でのエネルギーや資源の循環活用に貢献できると期待されています。
バイオマス資源の中には、汚泥や動物の糞尿など「臭い」が問題となるものも多くあります。しかしメタン発酵の場合、メタン菌は酸素が無いところこそ元気に活動しますので、完全に空気の入れ替えがない場所で発酵を行うことができ、それゆえに臭いが外に漏れることがありません。
CH4を取り出した後のバイオマスの残りも、アンモニア(NH3)と水分を取り除くことにより、安定した固形燃料へ変換させることができます。
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